ISSN: 0037-3796
日本神経化学会 The Japanese Society for Neurochemistry
Bulletin of Japanese Society for Neurochemistry 58(1): 25-26 (2019)
doi:10.11481/topics100

研究室紹介研究室紹介

鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 生体機能制御学講座 生化学・分子生物学分野

発行日:2019年6月30日Published: June 30, 2019
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平成30年、鹿児島は大河ドラマ“西郷どん”や明治維新150周年などで大いに盛りあがっていました。その年の4月に私は鹿児島大学・医歯学総合研究科(医系)の新任教授として赴任いたしました。大学および地域の方々に温かく迎え入れていただき、早一年が過ぎました。

鹿児島大学医学部は、明治維新直後の明治2(1869)年に薩摩藩が英国人医師であるウィリアム・ウィリス先生を鹿児島に招き、西洋医学所(鹿児島医学校)と附属病院を設立したのが始まりです。開校初期には東京慈恵医科大学の創始者、医学者・高木兼寛先生も在籍されており、日本の近代西洋医学の基礎の一端を担ったという自負と伝統があります。現在の医学部は歯学部、保健学部と共に市街地から少し離れた小高い丘の上にあり、錦江湾や桜島がとてもきれいに見える自然豊かな環境にあります。

教室の沿革

明治から時代はだいぶ過ぎますが、私の所属する教室(分野)は昭和55年に生化学第二講座として開設されました。初代教授は村松喬先生(名古屋大学・名誉教授)が務められました。平成6年からはカテニンの単離・同定で著名な小澤政之先生が二代目教授として教室を引継ぎ24年間にわたり率いてこられました。この間、大学院化や独立法人化などの変革があり、それに伴い教室名が生化学・分子生物学分野に変わりました。

私は平成30年4月に三代目の教授として就任いたしました。折しも研究室がある建物の耐震改修を行う計画年度にあたり昨年はしばらく仮住いでしたが、先日ようやく改修工事が終了し、床も壁も新調された研究室で気持ちも新たに研究と教育を行っています。

研究について

私たちの研究室では生化学、分子生物学、細胞生物学的な手法を主として、生理学的、解剖学的な解析・技術も取り入れた分子神経生物学・神経化学を専門としています。特に、神経細胞が強いシナプス刺激を受けた際に発現誘導される“神経活動依存的遺伝子”について、このような遺伝子発現変化がどのように神経機能や大脳の機能を調節しているのかということを解明すべく研究を行っています。ここ数年、神経科学の分野にも単一細胞遺伝子解析の波が押し寄せ、数千個から数万個の大脳神経細胞の遺伝子発現変化を網羅的に単一神経細胞レベルで解析することが可能となるなど、たいへん競争の激しい研究分野になっています。私たちもその中で後世に残るような成果を出すべく日夜奮闘しています。

私は東京大学理学部生物化学科の出身で、学部・修士課程時代は伊庭英夫先生(現、千葉大学・特任教授)のもと血清刺激などで発現誘導される遺伝子c-fosやc-junによる細胞周期制御機構に関する研究に携わりました。大学院博士課程では東京大学医学部第一生理学教室の宮下保司先生(現、理化学研究所脳神経科学センター長)のもとで大脳生理学を学びました。その後、米国ジョンズホプキンス大学への留学を経て、東京大学医学系研究科・神経生化学分野の尾藤晴彦教授のもとで神経活動依存的遺伝子Arcの機能解析を行いました。平成25年から5年間は京都大学メディカルイノベーションセンターという研究所の産学連携プロジェクトに参画し、“認知症改善のための新たな創薬標的分子を探索・同定する”という目標を掲げて新規の活動依存的遺伝子探索を行いました。

鹿児島大学ではこれまでの研究を発展させ、さまざまな活動依存的遺伝子がどのように認知機能、特に記憶形成や維持に寄与しているのか、という大脳認知機能の分子基盤についての研究を進めています。

教室について

現在、私の研究室には私を含め准教授の原口みさ子先生、助教の城山優治先生の3名がスタッフとして在籍しています。また、実験補助員、技術員や秘書の方にはさまざまな面で研究をサポートしていただいています。嬉しいことに数人の医学部学生が私たちの研究に興味を持ってくれ、教室に出入りしてくれるようになりました。また最近では臨床系の先生方とも共同研究を開始し、医局からもスタッフの先生や大学院生の方が私たちの研究室で一緒に研究を行うようになり、この一年でだいぶ研究室としての活気が出てきました。前任教授を含めた周囲の先生方や学部・研究科からのご高配を賜り、また、科研費などの公的資金の他、民間助成金を受け、さらに企業との共同研究も開始することができました。これらのサポートにより新天地で研究を進める体制が整いました。この場をお借りして深く感謝いたします。

まだまだ発展途上の研究室ですが、現在、一緒に研究をおこなっていただける大学院生(修士課程・博士課程)やポスドク研究員を募集しております。より具体的な研究内容はウェブサイト(https://www.kufm.kagoshima-u.ac.jp/~biochem2/)をご覧いただければ幸いです。興味のある方はお気軽に奥野(okuno@m.kufm.kagoshima-u.ac.jp)までご連絡ください。

最後になりましたが、この度の執筆の機会を頂きました「神経化学」編集長の澤本和延先生をはじめ関係者の先生方に心から感謝申し上げます。また、神経化学会の皆様方には今後ともご指導ご鞭撻のほど宜しくお願い申し上げます。

Bulletin of Japanese Society for Neurochemistry 58(1): 25-26 (2019)

改修直後の何もなかった実験室

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機器搬入後の実験室でのラボメンバー集合写真

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