ISSN: 0037-3796
日本神経化学会 The Japanese Society for Neurochemistry
Bulletin of Japanese Society for Neurochemistry 58(1): 29-30 (2019)
doi:10.11481/topics102

研究室紹介研究室紹介

神戸学院大学大学院 薬学研究科 幹細胞生物学研究室

発行日:2019年6月30日Published: June 30, 2019
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神戸学院大学は、社会科学系4学部・人文科学系3学部・自然科学系3学部の計10学部15学科と大学院8研究科を設けている総合大学であり、神戸港と市街を見渡すポートアイランド西岸に位置するポートアイランドキャンパス(神戸市中央区)と、明石海峡と淡路島を一望する漆山の丘に位置する有瀬キャンパス(神戸市西区)の2つのキャンパスを擁し、在学生は一万人を超える。本学は1912年に森和佐が創立した森裁縫女学校に端を発し、森和佐の長男である森茂樹(1940~1956年京都大学医学部病理学第二講座教授、山口県立医科大学学長(現、山口大学医学部))により1966年に設立された。私の研究室は、ポートアイランドキャンパスの薬学部研究棟に実験室を置き、大学院の薬学研究科の所属でありながら、薬学部(6年制)の4年次以降の卒業研究を指導する機会をいただくと共に、食品薬品総合科学研究科の大学院生、テクニカルスタッフ、研究員の合計14名で構成されている。

私のここに至るまでの経緯をご紹介すると、民間企業の研究員を3年間経験した後に、脳卒中易発症高血圧自然発症ラットを樹立した家森幸男教授(当時)が主宰されていた京都大学人間・環境学研究科で2002年に博士号を取得し、その後、京都大学再生医科学研究所、ジョンズホプキンス大学、同志社大学発達加齢脳研究センターを経て、2012年に同志社大学大学院で任期付の独立准教授として研究室を主宰する機会をいただいた。5年間の慣れないPI生活がようやく落ち着いた頃に任期が切れ、どうしたものかと戸惑っている最中、2017年に神戸学院大学へラボを移す機会をいただいた。大学院時代の指導教官であった家森幸男先生は、京都大学医学部病理学の出身であり、恩師と同じルーツを持つ学者が創設者である大学へ移る機会をいただいたのも何かの運命かと嬉しく思い、また、心から感謝している。

ここ数年、私の研究室が注目していることは、毛細血管の発生・発達・老化であり、これが周囲の組織幹細胞の微小環境の構築・破綻にいかに関連性があるのかについて、大脳皮質の発生・発達・老化を中心に研究を行っている。特に、毛細血管が極めて多種多様な性質をもったヘテロな内皮細胞の集団であることに着目し、固有の性質をもった血管が特有の生理機能を発現することが、脳の発生・発達・老化現象を解く上で重要であるとの観点から、研究を進めている。学位取得後の15年間は、神経発生に特化して研究を行ってきたが、これまでの枠にとらわれることなく、大学院では病態を中心に研究を行ってきた経験から、最近では神経疾患における毛細血管の生理的な意義にも注目している。また、企業時代の繋がりで生まれた共同研究から、皮膚組織における毛細血管や末梢神経の加齢変化や病態についても研究を展開しており、PI生活が8年目に入り徐々に新しい分野に挑戦しながら研究を広げている。一方で、研究スタイルは、古典的ながらも直感的で最も分かりやすい「形態と機能」を顕微鏡観察から明らかにする研究手法を好み、組織を根気よく観察し新しい現象を見つけることを一貫して続けており、この研究スタイルは曲げることなく追求していくことを心に決めている。

現在、PIとして自由なサイエンスを続ける機会・環境をいただいていることには感謝しかない。これまでの研究歴は簡単な道ではなかったが、いずれの場においても研究を楽しむことができたのは、いつも何処かで私の将来を案じ、手を差し伸べ、叱咤激励してくれる恩師や友人の存在と、研究の面白さを共感できる学生と出会えたお陰であり、これが研究者人生の財産だと感じている。今後も自分なりの基礎科学を追求することと、次の世代の研究者を育てることが、これまでの全ての恩義に報いる方法だと考え、より一層日々自分を成長させ、研究に精進していきたいと考えている。

最後になりましたが、このような執筆の機会をいただいた出版・広報担当理事の澤本和延先生に心から御礼を申し上げると共に、日本神経化学会の諸先生方におかれましては、今後ともご指導ご鞭撻賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。

Bulletin of Japanese Society for Neurochemistry 58(1): 29-30 (2019)

写真 研究室メンバー(前列中央が筆者)

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