神経化学 Bulletin of the Japanese Society for Neurochemistry

ISSN: 0037-3796
日本神経化学会 The Japanese Society for Neurochemistry
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Bulletin of Japanese Society for Neurochemistry 59(1): 17-19 (2020)
doi:10.11481/topics123

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秋田大学大学院医学系研究科 形態解析学・器官構造学講座

発行日:2020年6月30日Published: June 30, 2020
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秋田大学は昭和24年に秋田師範学校、秋田青年師範学校および秋田鉱山専門学校を母体として学芸学部と鉱山学部からなる大学として発足し、現在は大学本部のある手形キャンパスの他、附属小学校や附属中学校のある保戸野キャンパス、医学部のある本道キャンパスと3つのキャンパスからなり、教育文化、国際資源、理工および医学の4学部で構成されています。医学部は昭和20年に秋田県立女子医学専門学校が設置されましたが、昭和22年に校舎が全焼、一旦廃止となり、その代わりに県立中央病院が設置されました。現在の秋田大学医学部は昭和45年に戦後初の医学部として創設、県民の強い熱意が原動力となって県立中央病院を国に移管する形で医学部附属病院が開設されました。ちょうど今年が医学部創立50周年の節目にあたります。このような経緯もあって県内の医療機関とは現在でも密に連携し、「秋田モデル」と称される県全体で取り組むシームレスな一貫教育に力を注いでおり、東日本最大規模を誇るシュミレーション教育センターは県内の医師や医療従事者も利用できるようになっています。一方、医学科1年生を対象としたnative英語模擬患者による英語医療面接OSCEの実施や希望者には学内選考を経た上でクリニカルクラークシップ中の一定期間、積極的に海外の医療施設に派遣するなどのグローバル化を意識した医学教育も併せて行っています。

さて、私たちの講座は医学系研究科医学専攻の病態制御医学系の一分野であり、大学院教育の他、学部教育では主に系統解剖学、神経解剖学および骨学の講義と実習を担当しています。講座のスタッフは私の他に准教授1名と助教2名となっています。全国的な基礎医学分野の定員削減の中、本学でも他の基礎講座はスタッフ3名となっているにも関わらず、解剖学講座だけは4名のまま維持されています。また、技術部から派遣された解剖学講座付の技術職員が献体業務に従事しています。

私は平成8年に大阪大学大学院医学系研究科の医科学修士課程に進み、遠山正彌教授(現大阪府立病院機構理事長)が主宰されていた神経機能解剖学講座(旧解剖学第二講座)においてご指導いただきました。当時、助教をされていた小川智先生(前金沢大学医学部第3解剖・教授)のグループに所属し、小胞体に局在する分子シャペロンの機能解析を中心に医学研究の基礎を学びました。その後、博士課程に進学し、同講座において玉谷実智夫先生(現在は開業医)ならびに片山泰一先生(現大阪大学大学院連合小児発達研究科・教授)のグループに所属し、脳血管障害やアルツハイマー病における小胞体ストレスを起源とする神経細胞死研究に主に従事いたしました。博士課程修了とともに平成14年からは旭川医科大学医学部機能形態学分野(旧解剖学第一講座)の助教として採用していただき、吉田成孝教授のご指導の下、多発性硬化症を標的とした脱髄の病態解析やオリゴデンドロサイトの機能解析の研究に従事し、研究のみならず医学教育についても吉田教授の薫陶を受けました。また、平成17年から2年間、米国ハーバード大学医学部附属ブリガム女性病院神経変性疾患センター(Khoury教授)に留学する機会を与えて頂き、神経免疫学の研究についても学ぶことが出来ました。このセンターは多発性硬化症分野で著名なHoward Weiner教授とアルツハイマー病分野で著名なDennis Selkoe教授が共同で創設したもので、多発性硬化症研究を行う複数のラボとアルツハイマー病研究を行う複数のラボから構成されていました。帰国後は再び旭川医科大学において研究と教育に従事し、平成30年4月より秋田大学の現講座を主宰させていただいております。思い起こせば、遠山先生をはじめ遠山門下の諸先生方にはこれまで様々な局面において数々のご指導や強力なサポートをいただき、感謝の言葉しかありません。また、脱髄研究が縁で故池中一裕先生や馬場広子先生(東京薬科大学教授)をはじめ、門下以外でも多くの先生方に大変お世話になり、学術的なことだけではなく、縁や人脈の大切さについても多くを学ばせていただきました。

現在、私たちの教室では各教員の関心に沿って自由に研究を行っているため、研究テーマは神経に限らず、多岐に渡ります。私自身はこれまでと同様、多発性硬化症を標的とした脱髄や再髄鞘化のメカニズムの解明を目指した研究とともに脳血管障害性認知症研究についても立ち上げました。秋田県は超高齢者社会を迎えており、認知症への対応がこれまで以上に求められています。私たちも微力ながら基礎研究を進めることで少しでも貢献できればと考えています。

私たちの研究は最先端機器や最先端技術を用いておらず、今時の学生からすれば興味がなかなか沸かないかもしれません。しかし、古典的な形態学的手法を用いた所見であってもそこから得られる情報は想像している以上にたくさんあり、重要な所見であっても多くは捨て去られています。その中から誰も気づいていない情報を見つけ出して誰も知らない世界をいち早く見たり、思った通りの成果が得られた時には最高の瞬間を味わえます。また、分子レベルでメカニズムを説明できるようになればより深い理解が得られます。その嬉しさや面白さを一人でも多くの医学部生や大学院生に知ってもらい、世界を相手に活躍できる研究者やphysician scientistとして活躍してくれる人材育成を行っていきたいと考えています。幸い、積極的に研究に参加したいという医学部生にも恵まれ、学内外の機関とも連携して共同研究を進めています。

秋田県は鳥海山や男鹿半島、白神山地や田沢湖をはじめ、自然豊かなところですので自然を満喫したり、四季を通してバラエティーに富んだ海の幸や山の幸も気軽に楽しむことが出来ます。また、大学においても新任の教授を中心に共同研究から技術相談に至るまで気軽に行えるような環境も整ってきており、異分野の実験技術や発想を自分の研究に自由に取り入れることも可能になってきました。共同研究施設に設置されている機器も地方大学にしては比較的充実しているのではないでしょうか。オリジナリティーのある研究を目指す人にとって実は良い環境なのかもしれません。秋田生まれの小野小町にちなんだ秋田米「あきたこまち」は「美人を育てる秋田米」として秋田県が全国に誇るブランド米にまで成長しましたが、地道な努力と工夫の積み重ねの結果だったそうです。2022年には秋田の「地力」をテーマとした秋田米の新品種が秋田米のフラッグシップとしてデビューすることが決まり、ますます期待が高まっています。私たちの講座もオリジナリティーのある研究を地道に行い、いつか「あきたこまち」や新品種に負けないブランド力を持てるよう、学生や大学院生が様々な出会いを大切にし、自由な発想でのびのびと楽しんで研究できるような環境を作っていきたいと考えています。

最後になりましたが、日本神経化学会の諸先生方におかれましては、今後ともご指導ご鞭撻賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

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写真1 基礎医学研究棟

基礎・社会医学講座が入っている。私たちの講座は3Fにあります。

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写真2 基礎医学研究棟前の桜並木

今年は新型コロナウイルスの影響で学生の自宅待機にとどまらず、教職員も在宅勤務となり、寂しい新学期を迎えました。(講座の集合写真を撮ることもできなかったので残念です)

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