「脳の窓」脳室周囲器官の動的な血管構築から読み解く脳と全身の情報交換機構
奈良県立医科大学・医学部・解剖学第二講座
発行日:2020年12月30日Published: December 30, 2020
脳室周囲器官は血液脳関門を持たない脳部位の総称である。血液脳関門を持たないことで、血中の分子を感知し、脳で産生したホルモンを血中へ分泌するため、「脳の窓」と呼ばれる。しかし、血液脳関門を持たないがゆえに、神経細胞が血中の有害な分子にさらされる可能性もある。著者らは①脳室周囲器官の血管はどのようなメカニズムで血液脳関門を持たないのか。②血液脳関門を持たない脳室周囲器官の神経組織はどのように保護されているのか。③脳室周囲器官の一つ脳弓下器官は血液中の細菌菌体成分リポ多糖(Lipopolysaccharides: LPS)をどのように感知しているのか。という3つの問いに取り組み、①血管のリモデリングが起きることで血管透過性・可塑性を高く保っている。②血管が動的である代わりにアストロサイトによるグリア瘢痕様構造と、二重の血管基底膜からなる血管周囲腔が血中物質の透過を制限している。③血管周囲腔に存在する単球-マクロファージ系細胞が末梢由来LPSを感知して炎症性サイトカインインターロイキン-1β(interleukin-1β: IL-1β)を産生するが、エンドトキシン耐性マウスではそのIL-1β産生が減衰する。ということを明らかにした(図1)。
© 2020 日本神経化学会© 2020 The Japanese Society for Neurochemistry
This page was created on 2020-10-28T11:28:56.742+09:00
This page was last modified on 2020-12-21T10:12:42.000+09:00
このサイトは(株)国際文献社によって運用されています。