神経化学 Bulletin of the Japanese Society for Neurochemistry

ISSN: 0037-3796
日本神経化学会 The Japanese Society for Neurochemistry
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Bulletin of Japanese Society for Neurochemistry 60(1): 15-16 (2021)
doi:10.11481/topics145

研究室紹介研究室紹介

藤田医科大学 精神・神経病態解明センター 神経行動薬理学研究部門

発行日:2021年6月30日Published: June 30, 2021
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2020年1月1日付けで藤田医科大学教授を拝命いたしました。僭越ながら本紙面をお借りして会員の皆様にご挨拶を申し上げます。私は1994年に名城大学薬学部に入学し、卒業研究では免疫系細胞の培養に明け暮れる日々を過ごしました。当時の薬学教育は4年制で学部学生の病院実習は任意とされていたのでした。私は、経験できるのならば大学病院で実習を行いたいと思い名古屋大学医学部附属病院を希望しました。実はこの時の選択が、その後の人生の大きな分岐点となりました。実習の合間の雑談から薬剤部長の鍋島俊隆教授(現藤田医科大学客員教授)が基礎研究を行っていることを知り、研究室(医療薬学)の見学に行きました。学部時代は全く関係のない分野で研究を行っていた私の目には神経化学に関する実験が新鮮に映りました。当時は医学修士が開設されていませんでした。そのため、私は名城大学修士課程へ進学し、出向という形で鍋島教授のもとで薬剤業務の臨床研修と修士論文作成のための基礎研究を行いました。基礎研究で脳の重要性やその機能の複雑さに対してさらに関心を深めた私は、名古屋大学大学院医学系研究科博士課程に進学して多くのことを学びました。私が言うのも何ですが、先輩にあたる先生方のご活躍から鍋島教授の教えは数多くの弟子達に受け継がれていると思います。

大学院修了後は、名古屋大学医学部附属病院で薬剤師をする傍らドパミン神経の制御機構に関する研究に従事しました。組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)が活動依存的にドパミン遊離を促進することを発見し、tPAが薬物依存形成に関わる共通の分子基盤であることも同定しました。2004年から2年間は金沢大学の山田清文教授(現名古屋大学医学部附属病院薬剤部)のもとで認知機能に関する研究に従事し、学習・記憶に関わる細胞内シグナルおよび感覚情報処理機構の神経回路を明らかにしました。2006年から再び名古屋大学に戻り、精神疾患の遺伝環境要因に関する研究を開始し、統合失調症発症に関わる環境因子の動物モデルの作製に従事しました。また、共同研究で腫瘍病理学の高橋雅英教授(現藤田医科大学教授)とのGirdin遺伝子改変マウスの解析、精神医学の尾崎紀夫教授との統合失調症バイオマーカーの探索を行いました。2010年から開始したドパミンシグナルのリン酸化プロテオミクス解析では、神経情報薬理学の貝淵弘三教授(現藤田医科大学教授)と共に快感を担う新規細胞内シグナルRap1経路を発見することができました。また、薬剤部では100名を超える職員と業務や研究をとおして苦楽を分かち合うことができました。この経験は、私にとって大きな財産となっています。このように様々な人々との出会いによって現在に至ります。

2020年から藤田医科大学へ異動し、精神・神経病態解明センターの設立準備に従事しました。研究技術が進歩した現在でも、脳の機能については未解明な点が多く存在しています。そのため、精神疾患(統合失調症、うつ病など)や神経疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病など)の原因も未だよく分かっていません。一方で日本の研究レベルの低迷化が大きな社会問題となっており、従来の研究室ごとの研究ではスピードと規模に限界があります。この状況を打破するために、本学では精神・神経疾患に特化した研究センターとして精神・神経病態解明センター(貝淵弘三センター長)が2021年4月に設置されました。本研究センターでは、ゲノム解析学、細胞生物学、神経生理学、神経化学、行動薬理学、ヒトイメージングおよび計算科学の7部門で構成され、ゲノムから個体に至るシームレスな研究体制が整えられています。本研究センターの特徴は、これらの研究室がアライアンスを深めて世界トップクラスの研究および将来を担う研究者の育成を行いつつ、精神・神経疾患の病態解明、未知である脳・こころの基本的原理の理解、新規治療法および新規技術の開発を目指す点です。現在、私は神経行動薬理学部門として新たに研究室を立ち上げ、助教2名と共に本研究センターに所属しています。本プロジェクトでは、これまで行ってきた快・不快に加えて様々な情動の動作原理・障害機序を個体レベルで明らかにしたいと考えています。また、本年度から大学院生(医学修士および博士)を受け入れる体制が整い募集しております。是非、興味のある方は遠慮なくご連絡ください(taku.nagai@fujita-hu.ac.jp)。私をここまで育てていただいた方々の恩に報いるためにも、人との出会いの大切さ、個性を生かした研究の重要性を後進に伝えていきたいと思います。新設の小さな研究室ではありますが、暖かく見守っていただけると幸いです。

Bulletin of Japanese Society for Neurochemistry 60(1): 15-16 (2021)

写真1 ラボメンバーとの写真(中央が筆者)。昨年4月より助教2名が加入してくれました。

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写真2 現在の研究室の風景。一年かけて漸く研究室としての機能を整えることができました。

最後に、学生時代から今日に至るまでご指導いただいた鍋島俊隆先生ならびに山田清文先生に深謝申し上げます。この度、本誌に執筆する機会をいただきました出版・広報委員会の竹林浩秀前委員長、等誠司現委員長並びに委員の先生方にお礼を申し上げます。

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