神経化学 Bulletin of the Japanese Society for Neurochemistry

ISSN: 0037-3796
日本神経化学会 The Japanese Society for Neurochemistry
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Bulletin of Japanese Society for Neurochemistry 60(1): 19-21 (2021)
doi:10.11481/topics154

研究室紹介研究室紹介

新潟大学大学院医歯学研究科組織学分野医学部顕微解剖学教室

発行日:2021年6月30日Published: June 30, 2021
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このたび、2021年1月に新潟大学大学院医歯学研究科組織学分野医学部顕微解剖学(旧 解剖学第三教室)の教授を拝命致しました芝田晋介と申します。何とぞよろしくお願い申し上げます。

日本神経化学会の会員の皆様の、非常に懐深く幅広いネットワークと、強力な応援やサポート(叱咤激励)があるのは本当に素晴らしく、私も苦しい時に何度も助けて頂き、現在に至っております。特に、研究を始めて間もない頃から「若手育成セミナー」などの素晴らしい機会の度に温かく育てて頂いた日本神経化学会の会員の一人として、まずは進路や将来に悩む若い研究者の皆様や学生さんへのメッセージより書かせて頂きます。

私自身、慶應義塾大学医学部を卒業して以来、これまで電子顕微鏡や光学顕微鏡を最大限活用した新規イメージング技術の開発や、神経発生や神経再生の過程で神経系の幹細胞が果たす役割に関する研究などを軸に、慶應義塾大学やハーバード大学で研究を行って参りました。新潟大学へ着任した2021年以降も、一つ一つの実験データ、一枚一枚の写真と真摯に向き合いながら、これまでの研究をさらに発展させられるように、ワクワクするような楽しいユニークな研究を活発に行って参りたいと考えております。もし電子顕微鏡や光学顕微鏡のイメージング技術を磨きたいと考えている方や、基礎的な医学生物学の研究に興味があるけど今後どうしようか悩んでいる方、臨床医学へ基礎医学研究の成果を積極的に応用したいと考えている方がいらっしゃいましたら、是非とも芝田(shibatas@med.niigata-u.ac.jp)まで、どうぞ遠慮無くコンタクト下さいますようお願い致します。

当教室(図1)では、電子顕微鏡や超解像度顕微鏡などを同一サンプルへ用いて微細な構造をイメージングする技術の開発に力を入れており、特に現在では電子顕微鏡を使って神経機能を可視化するプロジェクトを熱心に進めております。さらに基礎医学的な成果を臨床へ生かすために、ヒトiPS細胞を用いた神経再生を促進する新規の人工神経を開発するプロジェクトも鋭意推進しております。電子顕微鏡のサンプル準備は細かな作業が多いですが、手先が器用な日本人には向いているのではないかと私は感じています。もし微細構造のイメージングを極めたいと思って頂けるようなら、まだポジションが空いており、未完の進行中プロジェクトもたくさんありますので、新潟大学の私どものラボや近所の活発に研究しているラボへお越し頂き大活躍して頂くことも選択肢の一つとしてお考え頂ければ幸いに思います。場合によっては、もっと最適なメンターの先生や、何か他の技術による解決策、さらにフィットするいい研究所などがあれば積極的に紹介させて頂きますので、是非とも気軽にご一報下さい。

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図1 着任まもなくの新潟大学医学部顕微解剖学教室のメンバー。前列向かって左端の白衣を着ているのが芝田です。コロナ禍での撮影のため、撮影の瞬間だけ一時的にマスクを外しました

これまでの経歴を簡単に述べさせて頂きますと、まず慶應義塾大学医学部に入学後の学部2年の時に慶應義塾大学医学部・微生物学教室の高野利也先生のラボにて実験させて頂くことをお許し頂き、老化・不死化をテーマに活発に基礎医学研究をされていた大先輩の今井眞一郎先生(現ワシントン大学教授)から分子生物学的な手技を直接習い始めました。超遠心チューブからエチブロまみれのプラスミドを初めて取り出した日のことや、巨大ゲル板のレーン毎に標識されたATG Cを1文字ずつワクワクしながら読んだ日のことを思い出します。2001年に医学部卒業後すぐ慶應義塾大学医学部・生理学教室に加わり、大阪大学から赴任直後の岡野栄之先生から情熱あふれる指導を直々に受けました。当時は土曜の朝に毎週仕事報告があり、しばしば失敗実験の報告しかできずに質問攻めに遭って悲しくなったこともある非常に厳しい日々を送っておりました。RNA結合蛋白質や神経幹細胞、神経堤幹細胞などの研究と並行して、電子顕微鏡と光学顕微鏡を同時利用した組織イメージング技術の新規開発もその頃から開始しました。学位取得後に約2年間にわたり米国ハーバード大学分子生物学教室Jeff W Lichtman先生の研究室へ留学し、電子顕微鏡漬けの日々を送りました。そこでLichtman先生からは、「Seeing is believing(百聞は一見にしかず)が意味するのは、生物イメージングで百人が見て百人とも納得する画像を示さなくてはならないこと」だと、土日休日も厳しい指導を頂きました。帰国後は慶應義塾大学医学部・電子顕微鏡研究室の専任教員となり、世界最速のマルチビーム走査電子顕微鏡などを用いた広域連続切片イメージングや、蛍光ラベルした切片の特定領域をそのまま電子顕微鏡解析に持ち込む免疫電顕解析技術を最大限に活用し、特定の分子とミエリンやシナプスなどの電子顕微鏡でしか捉えられない細胞内小器官の局在を明確に捉えてきました。電子顕微鏡研究室には学内や国内だけでなく、世界中からの多数の解析依頼が届き、ヒト由来の生物組織だけでなく物質・材料から植物まで、あらゆる種類の試料を最適な手法によって電子顕微鏡イメージングすることを求められており、様々な苦労を重ねながら経験を積みました。

そして今回、縁あって新潟大学の医学部顕微解剖学教室に着任することになった訳ですが、私にとってこの研究室のイメージは、電子顕微鏡解析のメッカのような研究室でした。私自身も学生時代からお世話になっていた教科書「標準組織学総論・各論」の著者の藤田恒夫先生や、同じく「入門組織学」などの多数の著作がある現学長の牛木辰男先生が教鞭を執られていた伝統ある教室です。また新潟大学も創立111年目を迎える歴史ある国立大学です(図2)。非常に重責ではありますが、幸い近くには医学部をはじめ脳研究所(図3)や、新潟大学病院(図4)などにも素晴らしい成果を挙げている優秀な先生方が多数おりますので、私も伝統に恥じない世界に通用するような成果を着実に残して参りたいと願っております。

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図2 新潟大学の通称「赤門」は、約100年前に建設され、その後に現在の地に移設された歴史的景観の一つとして国指定の登録有形文化財に指定されています

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図3 新潟大学脳研究所入り口。多数の優秀な研究者が活発に研究されています

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図4 夕日に照らされる新潟大学病院の外来玄関。外来棟の上にはヘリポートも設置されています。臨床研究チームとの共同研究もすでに開始されています

新潟大学での教育業務としては、医学部2年生対象の組織学の講義実習(図5)を中心に担当しておりますが、これまで約20年に渡って医学教育に携わってきた経験を生かし、学生自身が将来の糧となるような何かを自分で発見してもらえるよう微力ながら貢献したいと考えております。

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図5 人数を半分にして距離を保ち、窓を開けて換気し続けながら、全員マスク着用で行われているコロナ禍での組織学実習の様子です

日本神経化学会の諸先生方には、今後もいろいろと多方面でお世話になると思いますので、ご指導ご鞭撻のほどを何とぞよろしくお願い申し上げます。

最後になりましたが、今回の執筆機会を与えて下さいました日本神経化学会の出版・広報委員会、委員長の等誠司先生、前委員長の竹林浩秀先生をはじめとする委員会の諸先生方、現在も厳しい叱咤激励を下さいます理事長の岡野栄之先生(慶應義塾大学医学部生理学教授)には、この場をお借りして厚く感謝と御礼を申し上げます。

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