ISSN: 0037-3796
日本神経化学会 The Japanese Society for Neurochemistry
Bulletin of Japanese Society for Neurochemistry 61(1): 17-18 (2022)
doi:10.11481/topics168

研究室紹介研究室紹介

近畿大学医学部脳神経内科

発行日:2022年6月30日Published: June 30, 2022
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2021年1月より近畿大学医学部脳神経内科の主任教授に就任いたしました永井義隆と申します。この度、神経化学誌への研究室紹介の貴重な機会をいただきましたので、日本神経化学会会員の皆さまに私と日本神経化学会の関わりと当研究室をご紹介させていただきたいと思います。

Bulletin of Japanese Society for Neurochemistry 61(1): 17-18 (2022)

私は1990年に大阪大学医学部を卒業後、同大学神経内科に入局して神経内科医としての臨床研修を受けました。同大学院にてパーキンソン病におけるリンパ球でのドーパミン受容体の発現解析を行い、第36回大会で初めて発表させていただいたのが、日本神経化学会との出会いでした。ミニシンポジウムで発表後の10分間にもおよぶ質疑応答は、大学院3年生の私にとって基礎研究の厳しさを初めて思い知る貴重な経験となりました。学位取得後、1997年から米国Duke大学神経内科に留学し、ポリグルタミン病をモデルとして神経変性疾患における蛋白質ミスフォールディング・凝集に着目した普遍的な病態解明・治療法開発を目指した基礎研究をスタートしました。2001年に大阪大学臨床遺伝学(戸田達史教授)の助手に着任し、留学中に見つけた凝集阻害ペプチドQBP1の治療効果を明らかにし、2003年に日本神経化学会の最優秀奨励賞を受賞することができました。2008年に国立精神・神経医療研究センター疾病研究第四部(和田圭司部長)に室長として赴任後は、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症など他の神経変性疾患にも研究を展開しました。本学会でも評議員として、シンポジウム企画委員や出版・広報委員、若手育成セミナーの講師、そして和田大会長の第59回大会では懇親会の司会も務めさせていただきました。2016年に大阪大学神経難病認知症探索治療学寄附講座の教授として独立研究室を主催し、基礎研究からアルギニンがポリグルタミン凝集阻害作用を発揮することを見出し、その臨床応用を目指してポリグルタミン病の一つである脊髄小脳失調症6型患者さんに対する医師主導治験を開始しました。このように、私は臨床神経内科医としてのバックグランドを持ちながら、日本神経化学会などで基礎研究者としての鍛錬を受けながらキャリアを積んできました。この度、思いがけないことに近畿大学から臨床の脳神経内科教室へとお誘いをいただき、基礎研究成果の臨床応用を目指して、異動することを決意しました。

近畿大学脳神経内科は、大阪府下では最初の独立した神経内科教室として1988年に開設され、初代の高橋光雄教授が開拓され、第2代目の楠進教授が発展させてこられた歴史のある教室です。特に、Guillain–Barré症候群などの免疫性神経疾患の研究では国内外でトップレベルの実績を積み重ねて全国的な中核的研究室となり、桑原基講師を中心に研究を発展させています。また、平野牧人臨床教授、西郷和真准教授(遺伝子診療部)を中心に、神経難病や認知症、片頭痛などの遺伝子解析研究を行っています。そして私の異動に伴って、一緒に神経変性疾患研究を行ってきた武内敏秀講師を中心とした学際的な基礎研究メンバー(医学系、理学系、薬学系、農学系)が大阪大学から加わり、国内唯一の臨床と基礎とが融合した脳神経内科教室へと発展を遂げています。近畿大学に異動後も、医学系のみならず、理学・薬学・農学系などの大学院生を受け入れて、神経変性疾患の基礎的な構造生物学、分子細胞生物学的研究から、ショウジョウバエ、マウス、マーモセットなどの動物レベル、そしてヒト患者検体を用いた臨床研究へとシームレスな橋渡し研究を行っています。

Bulletin of Japanese Society for Neurochemistry 61(1): 17-18 (2022)

これまでに引き続いて、神経変性疾患の克服を目指した基礎研究を推進するとともに、脳神経内科の臨床、教育にも全力を尽くす所存ですので、日本神経化学会の皆さま方には、今後とも一層のご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

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