ISSN: 0037-3796
日本神経化学会 The Japanese Society for Neurochemistry
Bulletin of Japanese Society for Neurochemistry 61(2): 111-113 (2022)
doi:10.11481/topics185

第15回神経化学の若手研究者育成セミナー開催のご報告

日本神経化学会

発行日:2022年12月30日Published: December 30, 2022
HTMLPDFEPUB3

神経化学の若手研究者育成セミナー(以下、セミナー)は、新型コロナウイルス感染のまん延のため、過去2年間、2回続けてオンライン開催となりました。しかし、第15回となった今回は、3年ぶりに、現地・対面で、セミナーを開催することができました。

本大会であるNeuro2022 は6 月30 日(木)から沖縄コンベンションセンターで開催されました。一方、セミナーは、大会前日の6 月29 日(水)に、個別セミナーと1日目の討論会を、大会第1日目の6月30日(木)に、全体セミナーと2日目の討論会を行いました。本大会と同様に、実際に現地・対面で開催できるかが直前まで分からなかったにもかかわらず、参加者58名、講師の先生14名、チューター14名、世話人6名による、総勢92名、7グループでのセミナーとなりました。

特筆すべきことに、本大会が3学会合同での開催であったことに加え、セミナー開催の意義が高く評価されたことで、セミナーも3学会合同での開催となりました。もちろん、この背景には、大会長の竹居先生をはじめとする、神経化学会関係者のご尽力とこれまでの長年の積み重ねがありました。その結果、講師と参加者が、3学会から集まり、より多彩なメンバーでのセミナー開催が実現しました。

実際のセミナーでは、まず、前週の6月24日(金)に、オンラインでzoomを用いた事前顔合わせを行いました。事前に知り合いになっておくことで、円滑な交流ができた、前年の経験を活かしての企画です。全員での自己紹介を“敢行(かんこう)”したあと、ブレイクアウトルームに別れて、各グループでの顔合わせを行いました。

Bulletin of Japanese Society for Neurochemistry 61(2): 111-113 (2022)

現地での個別セミナーは、大会前日の6月29日(水)に、那覇市の沖縄市町村自治会館で行いました。7グループに分かれ、グループごとに2名の講師の先生に、それぞれ1時間程度の講義を行っていただきました。いずれの講師の先生も、恒例の、熱のこもった講義を行って下さいました。研究内容に加えて、これまでの歩みや、若手へのアドバイスなど、多岐に渡る、個性豊かな講義が行われました。マスク着用でありながらも、熱く盛り上がる講義の様子を目にして、「従来通りのセミナーが帰ってきたなあ」と感慨深いものがありました。

個別セミナーの後は、3台のバスに分乗して、主な宿泊先であるホテル山之内とエルズイン那覇に移動したのち、ホテル山之内とレステル那覇に再集合して、1 日目の討論会を行いました。感染対策のために、各グループがさらに2つに分かれ、グループ毎に違いはあったものの、講師の先生1名と、チューター1、2名、参加者4、5名、合計6から8名の、小さなサブグループを基本として討論会を行いました。これも感染対策のため、マスク着用、会話時は飲食禁止、としましたが、そのような形での討論会ははじめてであったため、どのくらい討論が持続するか、懸念されました。このため、双方向的な討論となるように、参加者にあらかじめ討論の題材を用意してもらうことにしました。「自分の研究について、講師に相談したいこと、将来について、あるいは、普段、興味を持って取り組んでいること、詳しめの自己紹介、など何でも構いません」として、参加者それぞれ、10分から30分の話ができるように、討論の題材を準備するように伝えました。すると、実際の討論会では、想像以上に参加者が熱弁を奮い、我々(運営側)の懸念は、杞憂(きゆう)に終わりました。むしろ、時間が足らず、一部の参加者しか発表できなかったグループもありました。その他の参加者には発表を我慢していただくことになってしまい、大変申し訳なかったです。この討論会での時間のマネージメントは、次回以降の反省点の一つです。

6月30日(木)には、本大会の会場である沖縄コンベンションセンターで、全体セミナーとして、テキサス大学で大活躍中の北村貴司先生に、「アメリカで研究室を主宰するためには」のタイトルで講義を行っていただきました。講義では、北村先生の沖縄との意外なご縁からはじまり、国内武者修行、そして、アメリカでラボを持つに至るまでの、波乱に満ちた(?)これまでの歩みを語っていただきました。面白いエピソードや役に立つアドバイスを豊富に交えてお話しいただき、伺っていてワクワクしてくる、エキサイティングな名講義でした。重要な研究を行うための秘訣などについても、惜しみなくご披露いただき、大変、勉強になりました。海外からの移動が困難な状況にもかかわらず快くお引き受けいただき、そして、素晴らしい講義を行っていただいた北村先生には、お礼の申し上げようもありません。講義を聴いた若手の中から、北村先生に続く、世界で大活躍する研究者が数多く育つことを願ってやみません。

全体セミナーの後は、またバスで移動して、各グループ、そしてサブグループでの2日目の討論会を行いました。一部のグループには、北村先生の講義で教えていただいた、チョークトークに挑戦してもらうために、急遽(きゅうきょ)ホワイトボードを配布しました。チョークトークでは、資料を何も持たず、自分でボードに説明などを書きながら発表を行います。その人の本当の実力がわかるため、アメリカでのジョブトークの時に用いられることがあるそうです。今回はホワイトボードをすべてのグループに準備することができませんでしたが、次回以降の新たな取り組みとして、面白そうです。

改めて今回のセミナーを振り返ってみますと、様々な感染対策を行いながら開催されたセミナーでした。一時的に感染が下火になった2021年の12月、竹居先生のご英断で、絶妙のタイミングで沖縄視察ができました。この視察が、感染対策を練るうえで、とても役立ちました。宿泊部屋は一人一室とし、部屋数、討論場所の確保のため、宿泊施設は3施設、討論会会場も2施設に増やしました。そのうえで、常時マスク着用、会話時の飲食禁止、グループ間での移動制限などの感染対策を行いました。大勢の先生や卒業生が飛び入りで自由に参加する、セミナーの名物ともいえる、討論会での活気に満ちた交流は、残念ではありましたが、今回は自粛といたしました。

このような様々な制限はありつつも、困難な状況のなかでも、なんとか現地・対面でのセミナーが開催できたのは、参加してくださった皆様とそのサポートをいただいた研究室の皆様、大会長の竹居先生をはじめとする3学会とその関係者の皆様、若手育成委員をはじめとするセミナーを応援してくださる多くの皆様、その他の皆様、その全員の、多大なるご理解とご協力のお陰です。それによって、最後まで綱渡りではありましたが、現地・対面での開催ができました。この場をお借りして、皆様のご理解とご協力、ご尽力に、深く御礼申し上げます。

そして、今回のセミナーの開催に際しては、ながひさ財団様から非常にありがたいご寄付をいただきました。様々な制限のなかでセミナーを開催・運営するために、極めて貴重なご寄付でした。ながひさ財団様に、心より御礼申し上げます。ご寄付は、若手研究者育成の趣旨にご賛同いただいたためであると伺いました。改めて、若手研究者育成のための、セミナーの使命を強く意識いたしました。

次回以降、感染状況が改善し、様々な制限が緩和されることを祈りつつ、今回の経験を活かして、皆様と共に、より良いセミナーの開催に尽力して参りたいと思います。皆様、本当にありがとうございました。また次回以降のセミナーと学会でお会いしましょう!

第15回神経化学の若手研究者育成セミナー 世話人代表 久保健一郎
世話人副代表 阿部欣史

This page was created on 2023-02-06T11:30:09.603+09:00
This page was last modified on


このサイトは(株)国際文献社によって運用されています。