ISSN: 0037-3796
日本神経化学会 The Japanese Society for Neurochemistry
Bulletin of Japanese Society for Neurochemistry 62(2): 67-68 (2023)
doi:10.11481/topics202

若手研究者育成セミナー参加レポート若手研究者育成セミナー参加レポート

若手育成セミナーに参加して

新潟大学大学院 医歯学総合研究科 口腔生化学分野 博士後期課程4年

発行日:2023年12月30日Published: December 30, 2023
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新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔生化学分野の那須優介と申します。私は本学歯学部卒業後に博士課程に進学し、現在は大学病院で歯科の臨床経験を積みつつ、一方で照沼美穂教授のご指導のもと、主に脳疾患と歯周病の関連について研究を行っております。歯学部の研究室ですので、神経科学を研究している方が周囲にあまりいない中で、共通の話題で盛り上がることができる本セミナーへの参加を、毎年楽しみにしております。私は今回が3回目の参加で、今年も昨年の沖縄大会に引き続き、完全対面での開催となりました。その模様について、私の体験を交えてご報告させていただきます。

今年の第16回若手育成セミナーは学会初日の夜(7月6日)と2日目の夜(7日)の2日間にわたって開催されました。以前参加した際は、そもそも本学会に同僚や知り合いが一人もいなかったため、上手く討論に加われるのか、周囲の頭の良さそうな方々と打ち解けられるのか、といった不安と緊張のなかでセミナー初日を迎えておりました。しかし今年は、昨年のセミナーでできた若手研究者の友人たちと再会できたことで、初めからリラックスした状態で臨めました。1日目はまず、事前の希望調査をもとに割り振られたグループ毎に部屋に集まりました。私が参加したグループGでは、島根大学学術研究院の藤田幸先生と、理化学研究所脳神経科学研究センターの長井淳先生の2名の講師の先生方よりご講演いただきました。

藤田先生からは、ご専門にされているクロマチンに着目した研究のお話と、自身のこれまでのキャリア形成のお話をしていただきました。研究内容に関するお話では、シンポジウム等での発表スタイルとは少し異なり、素人の私にでも理解できるよう、物事を分かりやすく噛み砕いて説明してくださりました。当然のことかもしれませんが、一流の先生ほど「自分の伝えたいことを相手に届ける」ためのスキルが高いことを実感し、感銘を受けました。またキャリア形成のお話では、留学先での経験も交えながら、まさに若手の自分たちにも身に覚えのあるような、等身大の悩みやキャリアの節目での選択の基準等についてお話しくださり、今後の自分の将来を考えるうえで大変参考になりました。後のグループディスカッションでも、藤田先生は受講者の素朴な疑問や相談に対しても優しく答えてくださり、その謙虚で誠実なお人柄も、研究者としての成功に重要なのではないかと感じました。

長井先生からは、研究者の心構えや必要な能力等の普遍的な要素にスポットを当ててご講演いただきました。その中でも、「たとえ小さな火だとしても、絶やさずに燃やし続ける」ことが重要である、という研究者の姿勢についてのお話が印象的でした。研究は難しく、一筋縄ではいかないことがほとんどですが、逃げずにやり続ければ必ず勝てる、という熱いメッセージをいただきました。長井先生のご自身のキャリアにおける成功と戸惑い、様々な経験に裏付けられたアドバイスの一つひとつに非常に説得力を感じ、自分の人生(≒仕事(研究))を様々な視点から見つめ直す貴重な機会となりました。講演後は、セミナー受講者の宿泊先であるアリストンホテル神戸に移動し、グループディスカッションを行いました。グループ毎に飲み物や軽食を囲み、自己紹介を交えながら、悩み相談や研究談義に花を咲かせました。講師のお二方とも非常に気さくで親身にお話をしてくださり、あっという間に時間が過ぎていきました。

2日目は神戸ポートピアホテルにて開催された学会全体の懇親会に参加した後、引き続きグループディスカッションを行いました。2日目は他のグループの受講者とも自由に交流し、大学や役職の垣根を超えて、非常に多くの方とお話しすることができました。今回は日本神経病理学会との初めての合同開催ということで、病理の先生方とも交流を深める良い機会となりました。また、昨年のセミナーでできた友人たちとも再会でき、さらにその同僚・先輩・後輩を紹介してもらい、数珠繋ぎ式に友達の輪が広がっていきました。23時のセミナー終了時刻を迎えても話が尽きることはなく、十数名で神戸の街に繰り出して(幹事をしてくれた方々、本当にありがとうございました)、朝まで飲み明かし、酔い覚ましにホテルまで1時間かけて徒歩で帰り、そのまま翌日の学会に参加したことは良い思い出です。

若手育成セミナーに参加して、明日からでも使えるような実験のヒントを得ることができたり、また研究者としての視野が広がり、研究の魅力を再発見することができました。初めは私も孤独で心細かったのですが、今では互いに励まし、刺激し合える仲間が全国にたくさんできました。そのうえこれだけの充実の内容で、今年は1食2泊付で学生は無料とは、他ではあり得ません。参加を迷われている学生の方には是非とも参加していただきたいですし、既に一度参加経験のある方は、もう一度参加することを強くお勧めします。本稿がその一助となれば幸いです。

末筆になりますが、このような素晴らしいセミナーを運営してくださった関係者の皆様、とくに世話人の皆様や講師の先生方、チューターの皆様に心より感謝申し上げます。

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