ISSN: 0037-3796
日本神経化学会 The Japanese Society for Neurochemistry
Bulletin of Japanese Society for Neurochemistry 63(1): 13-14 (2024)
doi:10.11481/topics210

研究室紹介研究室紹介

浜松医科大学 光医学総合研究所 革新的診断治療法研究部門 光神経解剖学分野

発行日:2024年6月30日Published: June 30, 2024
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当研究室は2022年7月に、浜松医科大学フォトニクス医学研究部光神経解剖学講座として立ち上がりました。今年度は開学50周年となることもあり、この4月に組織改変によりフォトニクス医学研究部は廃止され、新たに光医学総合研究所が設立され、当研究室はその一翼を担うこととなりました。

私は1998年に大阪大学理学部生物学科(小倉明彦教授)を卒業し、修士・博士課程は蛋白質研究所故畠中寛教授の下へと進学しました。畠中教授は2001年に本会の大会長(初めての日本神経科学会との合同大会)を務める予定でしたが、5月に駅伝大会でゴールした直後に急逝されてしまいました。その後、研究室は解散となってしまいましたが、幸い論文が出ていたことから、無事にその年度末に学位を取得することができました。畠中研究室最後の大学院生ということになります。その後、ポスドクとして大阪大学医学系研究科遠山正彌教授の門を叩き、解剖学分野へ入りました。ただし、実際にどっぷりと解剖学に浸るのは2010年に浜松に赴任してからで、当時は研究に明け暮れていました。2003年に当時千葉大学医学部で教授になられた山下俊英教授(現大阪大学)の下で半年という短い期間でしたが助手を務め,2004年からドイツMax-Planck研究所のProf. Rüdiger Kleinの下で再びポスドクとして武者修行しました。機能が不明なFLRT2という遺伝子のノックアウトマウスを作成し、フェノタイプを解析するというプロジェクトでした。苦労してノックアウトマウスを作ったものの、なかなか機能がわからず悶々とした時間を過ごしたのですが、反発性神経軸索ガイダンス分子であることを突き止めました。反発作用を見るためのストライプアッセイで、見事な縞模様ができた時は身震いするほど感動しました。実は、RüdigerはEphrin研究でガイダンス分野のスペシャリストでしたので、その後は共同研究も含め、比較的トントン拍子に研究が進みました。

浜松医科大学には2010年に器官組織解剖学講座(佐藤康二教授、当時神経機能解剖学講座)の助教として赴任しました。引き続きFLRT2の研究をしたり、新しいガイダンス因子としてNetrin-5を見出し、神経新生に関わっていることを報告してきました。2017年に准教授となり、2022年に上述した通りフォトニクス医学研究部の教授を拝命しました。オフィシャルにはスタッフを取れないのですが、佐藤康二教授のご厚意で引き続きこれまでと同じ場所でグループも引き継ぐ形で研究を進めています。現在は助教2名、大学院生4名(中国2人・ベトナム1人・整形外科1人)、実験補助員2名、秘書1名の計10名のグループで頑張っています(写真)。研究内容は脳虚血・脊髄損傷・精神疾患における神経軸索ガイダンス分子の役割を解析したり、骨形成、血管リモデリング研究など、多岐に渡っています。ここ最近注力しているのは、3次元解析です。本学ではイメージングに力を入れていることもあり、透明化組織専用レンズを備えた共焦点顕微鏡やライトシート顕微鏡を活用し、マクロからミクロまで3次元でイメージングしています。最近つくづく思うのは、生命現象は「美しい」ということです。美しさの中にも合目的性があり、合目的だから美しいと感じるのかもしれません。高度な生体機能を実現するメカニズムは既に体の中に備わっており、我々はそれを紐解く宝探しみたいな旅をしているのかもしれません。

Bulletin of Japanese Society for Neurochemistry 63(1): 13-14 (2024)

研究室メンバー:筆者は左から4番目

私にとって日本神経化学会は、畠中研究室・遠山研究室門下生として大変思い入れのある学会です。人生初めての学会発表も日本神経化学会でした。学生だった当時は、知り合いの人もいなくて心細い思いをしましたが、今では非常に多くの先生方と知り合いになり、大変刺激的であり居心地の良い学会です。また、2023年度より大変恐縮ではございますが、理事という大役を拝命し、この歴史ある学会のさらなる発展のために尽力していく所存です。また、出版広報委員も10年近く務めています。はじめての学会運営で右も左もわかりませんでしたが、当時も出版広報委員長であった澤本和延教授(名古屋市立大学)先生と一緒にFacebookを立ち上げたり機関誌の電子化などを進めて参りました。その後も準公式X(旧Twitter)やInstagramを始めたりと、時代の流れに合わせながら、必要に応じて改革を進めて参りました。今年は第1回フォトコンテストの開催及びHPの刷新という2大プロジェクトが進行しており、本学会の新たな一面を築けたらと思っております。是非、会員の皆様からの積極的な応募をお待ちしております(この記事が出る頃には締め切られていると思いますが)。

思い返してみますと、博士を取得してから20年以上が経ちました。この間の研究の進捗は凄まじいものがあります。当時はシークエンスを読むのも大変苦労しており、巨大なガラス板で電気泳動用のゲル板を作ってシークエンスしていました。大切なのは今後の研究生活ですので、時代に合った研究手法を取り入れ、更に邁進したいと思います。遠山先生の教訓である「紙(=論文)書いてナンボやで」という言葉を胸に刻みつつ、精進して参ります。

末筆ながら、これまでご指導賜りました多くの先生方、いつもサポートしてくれている研究室メンバーに厚く御礼を申し上げます。今後とも、日本神経化学会の先生方におかれましては、ご指導・ご鞭撻のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。また、本稿執筆の機会を与えて頂きました、出版広報委員会委員長の澤本和延教授に深謝申し上げます。

Bulletin of Japanese Society for Neurochemistry 63(1): 13-14 (2024)

現在建設中の神経分子機能解析施設。年末には建物が完成し、2階に移転する予定です。

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