ISSN: 0037-3796
日本神経化学会 The Japanese Society for Neurochemistry
Bulletin of Japanese Society for Neurochemistry 63(2): 81-85 (2024)
doi:10.11481/topics226

第1回フォトコンテスト受賞者の声第1回フォトコンテスト受賞者の声

第1回フォトコンテスト受賞者の声

発行日:2024年12月30日Published: December 30, 2024
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最優秀賞

山梨大学大学院総合教育部医学域薬理学講座
久保田 友人

この度は、最優秀賞を頂戴し、大変光栄に存じます。ご指導いただきました山梨大学・小泉修一教授、自治医科大学・大野伸彦教授に心より感謝申し上げます。本作品は、アレキサンダー病モデルマウスにおいて、アストロサイトが有髄神経軸索からミエリンを吸い取る様子を捉えたもので、これを“ミエリン吸引貪食”と名付けました。アストロサイトは“ノンプロフェッショナル貪食細胞”と考えられているため、それが巻き付くミエリンをダイナミックに吸引しているとは予想だにしていませんでした。今後は、ミエリン吸引貪食の分子メカニズムを明らかにし、これを標的とした治療法の開発を目指して精進してまいります。

Bulletin of Japanese Society for Neurochemistry 63(2): 81-85 (2024)

受賞作品「アレキサンダー病アストロサイトによるミエリン吸引貪食」

アレキサンダー病は、アストロサイト特異的遺伝子GFAP の変異を原因とする稀少性白質変性疾患である。今回、私たちはSBF-SEMを用いて、アレキサンダー病モデルマウスの白質部位“脳梁”において、アストロサイト(青)が有髄神経軸索(黄)からミエリン(緑)を吸い取るようにして細胞内に取り込んでいる様子を明らかにした。この前例のない「ミエリン吸引貪食」が、本疾患で認められる白質変性の分子病態である可能性が高い。

優秀賞(順不同)

藤田医科大学神経再生・創薬研究部門
Supakul Sopak

この度は、第1回日本神経化学会フォトコンテストにおいて優秀賞を賜り、誠にありがとうございました。共培養法はiPS細胞由来の細胞に対して様々な効果がありますが、本作品では、形態変化を示す効果を表現いたしました。本共培養系が、今後、様々な神経疾患の解析や創薬に応用されることを期待しております。フォトコンテストを通じて、本共培養系を多くの方々に知っていただけたことを、大変嬉しく思います。今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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受賞作品「ヒトiPS細胞由来神経細胞・アストロサイトの共培養系」

本作品はヒトiPS細胞から分化誘導した神経細胞とアストロサイトの共培養系の免疫染色画像を示した(赤:GFAP、緑:S100β、マゼンタ:MAP2、青:Hoechst)。共培養系は、細胞成熟度を高め、各細胞種のin vivo 様の形態に近づく効果をもたらす他、Tripartite synapse の形成や分泌物による刺激などの相互作用を有し、ヒト細胞を用いた疾患解析や創薬研究において強力なツールである。

奈良県立医科大学解剖学第2講座
辰巳 晃子

この度は優秀賞を頂き、誠にありがとうございました。大変嬉しく光栄に思います。この写真は、組織透明化技法と免疫染色法を用いて、マウスの大腸粘膜に広がる神経線維とそれに寄り添うマクロファージを描き出しました。私たちは真皮マクロファージが痛みの閾値を制御する事を見出しており、このメカニズムが内臓痛にも適用されるのかを研究中です。神経化学の研究はますます難しくなっていると感じますが、一枚の写真からさまざまな想像が膨らむ楽しさは今も昔も変わりません。この受賞を励みにさらに研究を深めていきたいと思います。このような機会を頂いたことに深謝し、フォトコンテストの益々の盛況を祈念いたします。

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受賞作品「幼若期のマウス大腸粘膜—神経線維に寄り添うマクロファージ」

組織透明化技法と免疫染色を用いて、CGRP陽性の神経線維(青)とCX3CR1陽性のマクロファージ(緑)を約70 µm の深度まで検出し、大腸粘膜の3D画像を構築しました。神経線維が粘膜固有層に広がり、それに寄り添うかのような多数のマクロファージが見られます。私たちは真皮マクロファージが痛みの閾値を制御することを報告しており(田中ら、2023)、このメカニズムが内臓痛にも適用されるかを研究中です。

北海道大学大学院獣医学院薬理学教室
四月朔日 周

この度は、日本神経化学会第1回フォトコンテストで優秀賞を受賞できたことを大変光栄に思います。まさか受賞できるとは思っておらず、作品名をChatGPTに考えてもらったのはいい思い出です。アストロサイトの美しさと、その複雑な突起構造を捉えたこの画像が評価されたことは、私にとって大きな励みとなりました。アストロサイトの形態を、ただのデータではなく、アートとして表現できたことをとても嬉しく思います。今後も、より美しい画像の取得に取り組み、自身の研究を推進できるよう精進していきたいです。

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受賞作品「星の灯火:アストロサイトの輝き」

この画像は、マウス海馬のアストロサイトにlucifer yellowを微小電極で注入し、共焦点顕微鏡を用いて撮影したものです。アストロサイトは星状膠細胞の名の通り、複雑な突起構造が特徴です。単一細胞に色素を注入することで、バックグラウンドの影響を排除し、細胞骨格に対する免疫染色では見えない細胞全体の形態を鮮明に観察できます。この画像は、星のように輝くアストロサイトの美しさと、その微細な構造の芸術性を示しています。

同志社大学大学院脳科学研究科神経再生機構部門
西島 邑咲紀

この度は記念すべき第1回フォトコンテスト優秀賞を頂き誠に光栄に存じます。ご指導、助言を下さった金子先生を始め、諸先生方、先輩方にこの場を借りて感謝申し上げます。応募締切り前夜まで何度も撮像し直したため、受賞のご連絡を頂きとても嬉しく感じました。受賞した作品は、成体脳内でニューロンを産生し続ける脳室下帯の側脳室壁表面に見られる神経幹細胞の突起を上衣細胞が取り囲むように並ぶ「風車様構造」です。この構造を初めて観察したとき、美しい模様のような配列にとても驚き、フォトコンテストへの応募を決意しました。本学会入会2年目にこのような賞を頂いたことを励みとし、今後の大会で研究成果を発表できるよう頑張ります。

Bulletin of Japanese Society for Neurochemistry 63(2): 81-85 (2024)

受賞作品「幹細胞を支持する脳室面の風車様構造」

成体脳にてニューロンを産生し続ける脳室下帯の側脳室壁表面には、神経幹細胞の突起を多繊毛の上衣細胞が取り囲むように並ぶ「風車様構造」が形成されている。この構造は幹細胞性の維持やニューロン産出制御に関与すると考えられており、生後14日前後ほどで成体に近い形態となる。写真は14日齢のマウスの脳室下帯を接着結合に局在するβ-catenin と繊毛起始部の中心体に局在するγ-tubulinで免疫染色を行い、顕微鏡下で風車様構造を可視化した。

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